幽霊だからそもそも歩かないんじゃね?使えるカードが多い環境ほど(白単での)採用枚数が増える迷宮の霊魂について。


 このカードの強さは環境に存在するドロースペルの強さと採用率に依存する。故にそもそも青いデッキが支配的とは言い難いスタンダードや、ウィザーズの意向によってあらゆるキャントリップが禁止措置を受けているモダンでは殆ど採用されていない。

 一方、ここ半年ほどのレガシーのデスタクを見ると、その有用性が認められてきたのかどのリストにも1~2枚は採用されている。特にメイン戦では不利な戦いを強いられることが多いANTやオムニテルといった青いコンボデッキ全般に強い点が特に高く評価されていると思われる。大量に投入されたキャントリップを悉く無駄牌にしながら3点クロックを刻む動きは、対処するための時間をも大幅に削る。
 他にもマーベリックで採用されている姿はちょくちょく見かける。森の知恵との相性が悪いのは玉に傷だが、苦手なコンボへの牽制になる点はやはり偉い。居場所を見つけた、と言っていいだろう。

 そして、最もこのカードの恩恵を受けたのはヴィンテージの白単だ。さすがにサリアが印刷された時に比べればそのインパクトはやや弱くなるが、それでも白単が待ち望んでいた一枚であることには変わりない。このカードの登場によって、白単は噴出やアンリコから盤面をひっくり返される可能性を下げ、一部コンボを封殺できるようになった。リストを見る限り3枚はほぼ確定枠であることからも、このカードのヴィンテージにおける干渉力の高さがうかがえる。



 とりあえず、それぞれの構築環境における迷宮の霊魂の立ち位置をある程度はっきりさせた。ここで注目するべき点は、レガシーとヴィンテージにおける採用枚数の明確な差だ。

 なにせカード単体の凶悪さはともかくとして、実の所ドロースペルの採用枚数で言えばレガシーはある意味ヴィンテージより恐ろしい環境である。コンボデッキに過剰な安定性を与えないために渦まく知識や思案すら制限リストに入っている上、他の強力なドロースペルも軒並み制限されているのがヴィンテージなのだ。クロックパーミッションからコントロール、コンボまでキャントリップが八枚以上投入されている環境はレガシーだけである。そのことを加味すれば、単純にドロースペルに遭遇する可能性はヴィンテージとレガシーとでは後者の方が高いかもしれない。

 それでは何故、レガシーでこの新種のヘイトベアが準必須カードのような扱いに留まっているのか。難しい話ではない。それは単に、ヴィンテージとレガシーにおけるクリーチャーに対する警戒の差である。


 レガシーでは言うまでも無くクリーチャーが溢れかえっている。レガシー環境はおおまかに「クリーチャーを無視できるコンボデッキ」と「クリーチャー中心のビートダウンデッキ」と「速さと柔軟性で勝るクロックパーミッション」の三竦みによって形成され、さらにこの環境へのあらゆる解答を用意できるデッキとして奇跡デッキが存在してる。一枚や二枚のヘイトベアに対処できないようなデッキはないと言っていい。この環境において、迷宮の霊魂は対処できるヘイトベアの内の一枚以上の何者でもない。タフネスの低さが災いしてクロックの高さを生かせないのも要因の一つだろう。

 それに比べて、ヴィンテージは少々特殊な環境である。「高速コンボデッキ」と「一部の強力カードを全力で使い倒すコントロールデッキ」と「両者と戦えるだけのパワーを持ったスタックス系デッキ」の三つが環境の筆頭だ。高速コンボは言うまでも無く、コントロールデッキは神ジェイスや初代テゼレット、僧院の導師といったパワーカードを全力で使い倒す。スタックス系デッキはWorkshopの恩恵によってそれら二つに対抗していく。そして、この三つのデッキが跋扈する環境の隙間を突いていくのが俗にフィッシュと呼ばれる各種クロックパーミッションや白単である。ここで問題になるのが、このクロックパーミッションというデッキの脆さである。


 クロックパーミッションの最大の強みは、その早いクロックと柔軟性であることは前述した。しかし、ヴィンテージにおけるクロックパーミッションはある理由から後者の柔軟性をレガシーのそれより大幅に失ってしまっている。

 その理由とは、渦まく知識と思案の制限である。ある意味、この二種類のキャントリップを失った影響が最も大きいのがこのクロックパーミッションというアーキタイプだ。欲しい時に欲しいカードを手に入れられる可能性が大幅に下がっているということは、安定性に難が出てしまう。ましてや環境は様々なパワーカードが跋扈する人外魔境。無のロッドを始めとする少々尖ったカードをメインから採用せざるをえない以上、最強のキャントリップ二種類を事実上失っているという事実は重い。対処するカードがデッキにあってもたどり着けなければ意味がない。要するに、相手の都合を押し付けられることに対して強くなりきれないのがこのアーキタイプの欠点だ。

 なので、この環境(特にコンボデッキ)はクリーチャーへのガードを過剰とも思えるほどに下げている。自分の都合を一方的に押し付けることこそが正義であり、受けに回ることは決して好ましくない。よしんば受けに回っても、一枚のパワーカードが状況をひっくり返し得る。マナレシオの良いデルバーやタルモゴイフは確かに脅威だが、それを最大限に生かすために必要な安定性や柔軟性を持ったデッキが無いのが実情だ。

 迷宮の霊魂がヴィンテージで複数枚採用されるのは、こういった経緯で生まれたクリーチャーへの警戒心の薄さを最大限に生かしたものだ。特に魂の洞窟というカウンターへのベストに近い解答がこれを後押ししている。レガシーではよっぽどデルバーに強いコンボデッキが隆盛しない限りこうなることはないだろう。ウィザーズもそれは望まないだろうから、当分この状況は変わらないと思われる。


 今後レガシー環境でこのヘイトベアの採用率がさらに向上する要素として、戦闘能力の低さを手軽に補える「何か」が登場するか、クリーチャーへの警戒が下がることが挙げられる。どちらも望み薄なので、余り期待しすぎてこのカードを過剰に信頼するのはやめた方が無難だろう。警戒されると弱くなるカードであることは他のヘイトベアと変わりない。

 

以上。すんごい話がそれた気がするけど気にしない気にしない。明日はGP千葉で8構おじさんになる予定。

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