各所で話題になっている新マリガンルール――通称(?)バンクーバー・マリガンについて思ったこと。


 バンクーバー・マリガンは、あくまでマリガンすると潜在的な情報アドバンテージを獲得できるだけなので、マリガンした方が有利なんてことにはまずならない。公式からのアナウンスにあるように、マリガンした側とそうでない側に発生してしまう致命的な差をいくばくか埋めてよりゲームを楽しめるようにできる良い変更だと思う。当然変更に伴って細かな問題が出ることは想像に難くないが、その殆どは自然となくなるだろう。




 利点について詳しく語ると抽象的な表現か確率計算に終始することになるので、ここでは予想される問題点や起こりうる状況について述べる。





 まず問題点についてだが、真っ先に思い浮かぶのは「占術忘れ」だ。生放送やプロツアー後のプロプレイヤーのブログなどを見ればその発生率は決して低いものではなかったのだろう。ルールが浸透した後も散見されることは疑いようもないが、忘れないようにしましょう、としか言えない。GPやPTのフィーチャーマッチのニコ生実況で発生したら「占術忘れてるwwww」「下に送っとけば勝ってたんじゃね?」みたいなコメントが画面を埋め尽くす様が目に浮かぶようだ。

 次に問題となるのは試合時間の増加だ。個人的にはバンクーバー・マリガンによる最大の問題なのではないかと思っている。キープするか悩み、マリガンを宣言してからシャッフルし、キープを宣言してから占術1に悩む。ベルチャーみたいな瞬殺系コンボデッキが悩むならある意味問題ないが、同系対決でメイン戦が長引いた後の2,3ゲーム目やコントロールデッキを使うプレイヤーにとっては致命傷にすらなりうる。時間について具体的な指針を掲げられているわけではないが、遅延行為だとみなされないように素早く決定しなくてはならない。単なる主観になるが、長くても十秒、出来る事なら五秒以内に占術を終わらせるのが理想的だと思われる。


 また、バンクーバー・マリガンによって起こりうる状況としてフェッチランドとの相互作用がある。後手番の場合は問題ないが、先手番の時にデッキトップに有効牌を置いてフェッチをセットした場合は、相手の行動次第でデッキトップの有効牌を諦めなくてはいけない場面が出てくる。ハンデスに対してカウンターやブレストを合わせたり、マナクリに除去を向けたりetc……。要するに、プレイミスを誘発する可能性があるということだ。このあたりは実戦で経験して結論を出すしかないだろう。 デッキトップのカードなんぞ墓の中で数える香典みてぇなもんさ!

 他にも後手番にとってバンクーバー・マリガンは≪選択/Opt≫みたいになるから若干有利、とする向きもあるだろう。コンボデッキの後手1キル率が極々微量ながら上がることも考えられる。実は先手番が有利とされるゲーム傾向への歯止めとしてこのルールを採用した……なんてことは多分ない。いくらなんでも穿ち過ぎである。そもそも不確定な手札一枚より先にセットランドして行動することが出来る方が有利だから殆どのプレイヤーは先手を好むのだ。占術によってその優位が覆るわけがない(しかも手札が減ってるし)。



 とにかく大事なのは占術1を過信しないことだ。「占術できるからキープ」より「キープ出来る手札が来たと思ったら不要牌を一枚下に送れた」くらいに考えないと痛い目に遭うだろう。ソースは「後手ドローあるからキープ!」とか舐めたこと言って事故死していった数多のプレインズウォーカー達。誰もが経験したことがある「運が悪かったように見えて実はミスプレイ」の典型。占術があるからキープしたのに運が悪かった、なんて言っていると同じ死に方を繰り返す。その数を減らすには、与えられた手札とデッキの中身からキープするか否かを決めるしかない。




 占術1が肯定するのはヌルいキープではなく、マリガン後にゲームがゲームとして成り立つ可能性だ 、ということで今回の雑記は終わりにする。




 このルール変更によって、マジック・ザ・ギャザリングから少しだけ哀哭の数が減りますように。

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